カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した映画「怪物」を見てきました!
美しい映像で社会に物申す是枝監督と、会話を重視しコメディから社会派まで書く坂元裕二さんの脚本。
この2人のタッグを見に行かないわけには行きません。
イラつく安藤サクラさんとイラつかせる永山瑛太さん。
さらに、坂元作品ではおなじみの田中裕子さんがいい味を出しています。
そして、何といっても子ども2人の世界観。
映画「怪物」あらすじ結末感想と考察!怪物なのは誰なのか考えてみました!
ネタバレあります!
映画「怪物」キャストの人物像
映画「怪物」の主要キャストの人物像を深堀りしていきたいと思います!
麦野早織(安藤サクラ)
〇夫を亡くし湊を一人で育てるシングルマザー。
〇夫は不倫旅行中に事故死。
〇普段は優しいけれど、キレると口が悪い。
〇クリーニング店で働いている。
〇人に言われたことは割とすぐに信じる。
シングルマザーですが、坂元裕二脚本によく出てくる貧困層ではありません。
夫が生前一戸建てを購入してくれていたのか、高台の一戸建てに住んでいます。
夫が事故死しているために、描写はありませんが保険金が入ったのかも知れません。
学校へ乗り込み、先生たちの態度にイラつくシーンは、湊が怪我をしていて被害者の立場でありながら、やり過ぎてモンスターペアレント化しているのが残念です。
クリーニング店に来たママ友が、担任保利がガールズバーに居たと言えばすぐに信じ、保利が湊がいじめていると言えば、自分の息子を信じ切らずに確認に行くタイプ。
保利道敏(永山瑛太)
〇挙動不審。
〇彼女が少しケバいためにガールズバーに通っているという噂が立つ。
〇生徒思いなのに伝わりにくい。
〇湊と同じくシングルマザーに育てられる。
〇人の考えに感化されやすい。
女性と縁遠い雰囲気を持ちながら、結婚を考えている彼女が居ます。
教師でありながら、挙動不審で他の先生からも感じが悪いから誤解を受けやすいと思われ、素直にことの経緯を話させてもらえなかったために、事態が悪化。
第一印象よりも生徒思いで、生徒を理解しようと努めています。
早織母子と同じ境遇で育っていて理解があるのに、彼女の考えに感化。
麦野湊(黒川想矢)
〇早織の子ども。
〇小学生。
〇父の様にはなれないと思う。
〇母の願いをプレッシャーに感じる。
〇事なかれ主義者。
〇依里への感情に戸惑い悩む。
感情を表に出すのが下手で、追い込まれた時に突飛な行動に出てしまうタイプです。
父の死因が、不倫の最中に起きたものだと理解していて、性にたいして嫌悪感を抱いている可能性大。
イジメに関しては傍観者で関わりたくないと感じています。
星川依里(柊木陽太)
〇家では虐待。
〇学校ではイジメ。
〇母は、家出。
〇文字が時々鏡文字に。
〇理科が得意。
〇自分の世界観があり発散上手。
家でも学校でも居場所がないのに、心はとても自由で明るくて人懐っこい性格。
湊の感情も、引っ越ししなくてはいけないことも、自分なりに受け入れるのが早い。
校長(田中裕子)
〇湊と依里の通う小学校の校長先生。
〇策士。
〇自分勝手。
〇学校や生徒を守りたい気持ちはある。
権力をたてに自分の思うように行動するタイプではありますが、一応その先にはプランがあります。
しかし、それはモラル的にはどうかと思うようなプランです。
映画「怪物」超簡単なあらすじ(ネタバレあり)
母・早織は、息子・湊が担任・保利に暴力・暴言を吐かれたと聞き、学校に乗り込みます。
しかし、学校側の対応は最悪。
保利先生は、逆に湊が依里をイジメていると言うのです。
それが誤解だとわかり保利先生は湊に謝罪をしに行くと、湊は台風の中出かけてしまいます。
早織と保利先生は、廃バスの中に2人が閉じ込められたと思い探しますが、姿はありません。
真実は、クラスメイトからイジメられる依里を湊は助けたりはしませんでしたが、放課後人に見られないところでは、2人は仲良しでした。
だんだん依里に特別な感情を抱く湊。
台風が明け、湊と依里は生まれ変わるのでした。
映画「怪物」伏線回収
映画「怪物」には、伏線や道しるべのようなものが、ところどころにバラまかれていました。
生まれ変わる
劇中に何度も生まれ変わるというセリフが出てきます。
父を亡くしていることで、普通の小学生より死を意識している湊。
母・早織はもう一度夫に会いたいという意味で生まれ変わると言っているのに対して、
湊は、母を裏切ったまま亡くなった父や性の違いに悩む自分をリセットしたいという意味合いで生まれ変わると言っているように感じます。
ラストシーンでは、本当に生まれ変わったのか?生まれ変わった気分なのか?明確になっていませんが、湊からすがすがしさを感じました。
自動車事故
早織は夫を交通事故で亡くしています。
しかも、不倫中に。
そして、早織が学校に乗り込むシーンで度々駐車するシーンが出てきますが、最後はバックをぶつけてしまいます。
さらに、湊が車から急に降りた時、車をぶつけています。
そして、校長は孫をひいて亡す事故を起こしています。
校長は、自分がしてしまったことを自分の地位を守るために夫になすります。
しかし、面会に行った時の様子から夫もそのことに納得していて、夫婦仲は悪くないようです。
スーパーで走る子どもに足をかけたり、同情をかうことでごまかそうと孫の写真を机に飾ったり、この校長も怪物に見えますが、湊の本当の気持ちや嘘をついたことをひき出したのは校長だけでした。
そして、「みんなが手にできるものだけが幸せ」という湊の幸せの定義を覆してくれて怪物のようでちゃんと教育者でもあるのだと思います。
だれもが被害者にも加害者にもなりうることを交通事故に例えているのでしょう。
おんなの「また今度」はない
保利の恋人は、保利の誘いにまた今度と答え、男の大丈夫と女のまた今度は信用できないと話すシーンがあります。
その後、記者に写真を撮られた保利からすばやく逃げるシーンで「また今度」と言って別れるシーンはシャレていました。
映画「怪物」考察
LGBTQを主題にしている作品に送られる「クィア・パルム賞」を取ったことを知らないで「怪物」をみたら、これが主題だとあまりわからないくらいさらっとした描写だと感じます。
あえて分類してみるのなら、湊はG(ゲイ)で依里はT(トランスジェンダー)と発達障害と学習障害もありそうです。
その描写は、湊はTVに出演しているオネエタレントに関心を示しているシーンが出てきます。
また、依里に髪を撫でられた時の過剰反応。
そして、ものすごく曖昧に描いていますが、依里に抱きつかれた時に体が反応していることを依里に指摘されています。
そして、(女性と結婚して、さらに不倫をするような)父親みたいにはなれないと思っています。
一方、依里は男子にはイジメられていますが女子とは仲良くしています。
科学や生物に長けていて、発達障害特有の一つのことに長けているデコボコを感じます。
また、文字は時々鏡文字になってしまいます。
サブテーマは、思い込み。
その思い込みが人の心から怪物を生み出しているのです。
「怪物」にはたくさんの思い込みが表現されています。
母・早織は、結婚=幸せ。湊が結婚するまで自分が頑張って育てると発言。
また、子どもの様子がおかしい→学校で何かあった→イジメと考えます。
保利先生は、男の子は男らしく。
イジメられている依里の近くにいたのが、湊だったから湊がイジメていると思いこむ。
彼女や女子生徒のいう事に対して、裏を取らずに鵜呑みにしてしまいます。
保利先生の彼女は、シングルマザーの家は問題を抱えていると偏見を持っていました。
そして、校長は学校や自分の地位を守るために、自分の罪を夫になすりますが、校長としての自分の代わりはいないと思いこんだのでしょう。
または、自分と夫の社会的立場は自分の方が上だと思いこんだのでしょう。
依里の父は、依里のことを怪物だと思い込み。
その思想に影響を受け、依里も自分を怪物だと思っている。
湊も男の子が好きな自分は、幸せになれないと思い込んでいます。
映画「怪物」湊の悩みのアンサーは?
意外にも校長が「誰かでないと手に入らないものではなく誰にでも手に入るものが幸せだ」と湊に教えます。
しかも、湊がどんな嘘をついたのか、何に悩んでいるのかは一切触れずに。
校長もきちんとした教育者であったはずですが、モンスターペアレンツや不慮の事故のせいで良くない一面が出てしまったのでしょうね。
話を戻して、「誰にでも手に入るものが幸せだ」ということをわかりやすくいうと、逆に愛やお金や育った環境、自分の特性などで幸せをはかることはできないと言いたいのだと思います。
依里は、親に虐待され学校ではイジメに合っていますが、自然の中で工夫して楽しく過ごしていて、湊より幸せそうに見えることが不思議でした。
きっとその答えは、校長先生の言ったことを誰からも教わらずとも知っているからなのでしょう。
ラストシーンは、観客にゆだねる形
ラストは、早織と保利が台風のあと湊を探します。
廃バスの中に埋まってしまったと考えた早織は窓から見ますが、雨カッパだけが残されていました。
湊と依里の視点では、間一髪でバスから抜け出て無事だったようにも見えますし、2人は亡くなったようにも感じます。
バスから抜け出て生まれ変わった2人の描写は死後の世界のようにも感じられます。
しかし、社会的に抹殺されてしまった保利先生は、学校での飛び降り自殺を図ろうとする衝動から我にかえり、自分のそもそものあやまちに気が付きます。
保利先生の未来はきっと明るいものになる予感がするので、子どもたち2人も、自分のマイノリティを受け入れて生まれ変わったという解釈が一番しっくりくる気がしました。
映画「怪物」ネットでの感想は?
映画「怪物」怪物なのは誰?
ありきたりですが、「怪物はみんなの心にいる。」というのが正解です。
良心と怪物の多面的な部分を持ち合わせているのが人間なんだと思います。
主要人物以外の心にも怪物がいました。
まずは、早織のママ友は保利先生がガールズバーに出入りしていると噂をします。
また、早織にとって印象のよかった湊の元担任は、保利先生に対しては暴力まがいに接していました。
湊のクラスメイトの女の子も憶測で湊が猫をいじめていたとチクリます。
もちろん依里をイジメるクラスメイトも怪物です。
映画「怪物」感想
湊と依里が森の中で遊ぶシーンは、これぞ是枝映画という美しい映像でした。
しかし、早織が学校でイライラするシーンは、坂元作品という印象です。
その両方が味わえる良作な怪物。
怪物には明らかな結末はありませんが、「そして父になる」と「三度目の殺人」に比べたら、ラストはそれほどモヤモヤしませんでした。
また怪物は、時系列がいったりきたりします。
そういう映画は、一度見ただけだと時系列がわかりにくいことが多いのですが、怪物は火事とトロンボーンの音を有効活用していて視点が変わっても観客が置き去りにされません。
湊と依里に関しては、誰にでもありそうな、友達を特別に思い過ぎる時期。
湊も依里に対してそういう気持ちなのかも知れないよと言いたいけれど、簡単に言ってはいけない空気感を、湊が醸し出しています。
踏み入れられない領域なんだと、少しの描写で伝えるこの映画は傑作です。
怪物は、バタフライ・エフェクトを用いたヒューマンミステリーであると同時に、2人の少年の性のリアルを残酷に美しく描いた作品だと思います。
まとめ
自分なりの「怪物」を見た感想・考察をまとめてみました!
まだ、見てない方は是非映画館で是非見てください。
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